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甘い生活

 世界じゅうどの国も、中央が豊かなのは当たり前だ。
 埼玉がどうちゃらとか群馬がどうちゃらとかいう漫画が流行った背景にあるのは、日本は豊かなようでいて全体的に見たら貧しいってこと。東京という強国のもとに、地方という属国があると考えたほうが日本のありようを把握しやすい。
 日本はひとつではないのだと、関東エリアの外の人はよくわかってるんじゃないか。
「かなのこと親友だと思ってたのに、こんな形で裏切られるなんて思わなかった」
 トイレから戻ったるなの声で、考えごとに没頭していたわたしははっとした。
「あ、ごめん。悪気があったわけじゃ」
「悪気があったわけじゃないって!? 親友だったらわかんじゃん!……もういいよ。友だちやめよ」
「ごめん。ほんとごめんなさい。新しいの買ってくる」
「そういう問題じゃないから」
 ずっと仁王立ちのまま、るなはわたしをにらんでいる。わたしはただ、とけかかった氷を見つめるばかりだ。
「もうこれからシェアなんてしない。翔君もわたしが占有するから。かき氷ほとんど一人で食べちゃったあんたが悪いんだからね。さよなら」
 そう吐き捨てるように言って、るなは店から出て行った。
 一週間後、翔君にふられたのでやけ食いするから甘味処につき合ってと、るなからLINEがあった。
「わたしたち、やっぱり親友だよね」
 あんみつのバニラアイスを頬張りながら、るなが言った。
 わたしは笑顔でうなずき、ところてんをすすった。

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