『今日も何か考えているのか(笑)?』
外を眺めていると横から顔を覗かせる。
「いいや?まだ花、咲いてないのに桜の香りがするなぁ〜って。あと少しで開花しそうだなって考えてた。」
『そうだな〜。蕾もふくれてる。咲くのは時間の問題だな(笑)。』
「だよね!私もそう思ってたところ(笑)。」
先生は私の腰掛けていた場所の隣に座る。
「先生、いっつも私に“何考えてる?”って聞いてくれるけど、先生は何考えてるの?」
先生は少し考えて口を開く。
『守る価値のある人は誰か。』
「素敵なこと考えるんだね。」
『私はこれでも教師だ。“生徒”に守る価値があるのかぐらいは考えるさ(笑)。』
「あっ、そっち(笑)?でも、私はそういうの好きだよ(笑)?私も考えるもん。この教師との関係は保たないといけないのか。命をかけて守る価値のある人は誰か。」
『考えることは一緒だな(笑)。』
先生はニコッと笑う。
「私の出した答えは、命をかけて守りたい人は少人数ってことかな〜。心臓1つしかないからそんなに沢山の人は守れないけど(笑)。」
『私も少人数だ(笑)。そんなに命はかけられんだろう(笑)。』
「確かに(笑)。」
私は先生の微笑みに微笑みを返す。
『ただ1つ言える事は、この事を考えないといけないのは少し寂しいと言う事だ。』
「大切な誰かが危ない目に合うってことだもんね?」
『それももちろん。だが、君の場合は特に、君が危ない目に合うぞ。』
「わかってるって、自分も死なない程度に命をかけるんでしょ(笑)?」
『あぁ。それでいい。』
「私は先生のほうが心配だけどね(笑)。」
『君には心配はかけないさ(笑)。』
先生はイタズラをする少年のようにニコッと笑った。
私は心の中で“先生こそ100%命かけるくせに。”と呟いた。
そして私はもう一度、桜の香りを探した。