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       無重力のプリズム

ボロボロのベンチに座り 疲れを吐き出した午後4時
はしゃぎ転げる犬 ボールに振り回される子どもたち
無色の吐息で空気を汚す なにも知らないおとなたち
知性とは程遠い 中身のない知育とがらんどうの公園

積もる話も積もらないまま つまらない時間を潰した
いつかのマザーグースの 実にも種にもならない情報
静かなような騒がしいような 砂利だけが残った広場
懐かしいような鬱陶しいような ガタガタのブランコ

そこで出会って別れてまた出会って 時間を潰し合う
近づけば近づくほど 遠くなっていくのは何故だろう
月や星空はあんなに美しかったのに 見えなくなった
自分は生まれてこのかた なにも手に入れてないよう

塗りたてのペンキで着飾ってみても 本質はそのまま
もはや折れそうなくらい大事に抱えて そっと逃げた
隠れるようにして体裁を取り繕っても やはり虚しい
そうしてまた時間を潰し合っては これでいいと笑う

無邪気にさかあがりしてみたが 失敗ばかりして泣く
最初から転ばない方法なんてないことに 気づけない
ひとりになりたがったり強がってみたり やるせない
いつだってこじらせて癇癪を起こしては 不甲斐ない

ぐちゃぐちゃの脳に 戒律でも刻み込めれば楽なのに
こんな混沌はくれてやるから まともな秩序をおくれ
なにも知らないことも知らず ここまで生きてこれた
名前も忘れた童歌を口実にして 涙も枯らしてしまえ

なにも色を写さない水晶体 思慕で焦がし切れた網膜
動かないブランコ 誰も滑らない滑り台に座っていて
人の流れから隔絶された 無色の世界に酔いしれたい
そうして人はひとりになって 重力と色彩に歩み寄る

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