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黄色いおにいちゃん No.3

「ただいま」
「おかえり。…ねぇ、いっつもどこで遊んでんの。誰と遊んでんの。ケンくんママが大学生くらいの男の人と遊んでるって言ってたんだけど」
ママは僕の答えを待たずに言った。
「…うん。カズにいちゃん!優しいよ!」
「正気?学校で習わなかった?『知らない人と遊んではいけない』って」
「でも、本当に優しいもん。不審者なんかじゃないもん!」
「ふ~ん。どうなっても知らんからな」
知ってたまるか!もう、こんな家出てってやる!
靴を履いて家を飛び出した。
さっきより空は暗くなっていた。こんな時間に1人で外に出たことはない。自分から出てきたくせに弱音を心の中で思った。

「…カズにいちゃん」
「…」
カズにいちゃんはなぜだか知らないけど、そこにいて、抱きしめてくれた。
「もう、カズにいちゃんと遊んじゃダメなんだって」
「…」
「僕、もっと遊びたいよ」
「…そうか。…もし俺が今、君を連れていくって言ったらどうする?」
「えっ。…分からない」
「じゃあ、少しは怪しんでるってことか」
そうじゃない。そうじゃない。
「そうじゃない!」
「じゃあどうなんだ」
僕は答えられなかった。これは算数のテストなんかよりもずっとずっと難しい問題だった。でもカズにいちゃんはぎゅっと抱きしめてくれて、僕が答えるのを待っていてくれた。

どのくらい経ったろうか。
僕は見たことのある景色を眺めていた。

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