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座禅

 森の中、わたのような白髪に、これまたわたのような白いひげの男が、大木を背に座禅を組んでいる。
 真面目な人間の共通点は視野が狭いこと、長期的なビジョンがないことだ。変化の激しい時代に……いかん、また雑念が。
「あの〜、すみません。サンタさんですかぁ?」
 白いひげの男が顔を上げると、リュックを背負った若い娘。若い娘の後ろに、バッグをたすきにかけた若い男。
「違うよ」
「りょう君、違うってえ」
「ばかだなあ。本物のサンタが自分からサンタだって言うわけないだろ」
「カナ、ばかじゃないよ……そっか、そうだよね。……えっと、サンタさんにぃ、ききたいことがあるんだけどぉ」
「なんだね」
「サンタさんはぁ、どうしてプレゼント配らなくなっちゃったの?」
「いい子がいなくなったから」
「嘘だあ」
「国から助成金が出なくなったからさ」
「どうして助成金が出なくなったの?」
「さあな。外圧かな」
「がいあつってなあに?」
「彼氏にきけ」
「りょう君、がいあつってなあに?」
「外国からの圧力だよ」
「どうして外国からの圧力で助成金が出なくなるの?」
「そういうもんなんだよ。とにかく、金がなきゃあ話にならん」
「だよねー。でもまたプレゼント配ってほしいなー」
「君は今年、いい子にしてたかな?」
「即答はできない」
 しばし間。若い男が口を開く。
「もういいだろ。行こうぜ」
「ちょっと待って……写真いいですかぁ?」
「いいよ」
「やった。友だちに自慢できる。今日友だちとディズニーランド行く約束してたんだけど、りょう君が有給取れたから急きょ予定変更したんですぅ」
 若い娘と若い男去る。どこからともなくトナカイが一頭現れる。白いひげの男、大木のうろからソリを引っ張り出しトナカイにつなぐ。まずはスポンサー探しだな。
 今年は本物のサンタさんが、あなたのもとにやってくるかもしれません。どうぞお楽しみに!

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