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夏祭り

日が沈んでいる中、彷徨うままたどり着いた街は、夏祭りをしていた。
そのままぷらぷらと屋台を見て歩く。浴衣を着た人とすれ違う。呼び込みの威勢のいい声と食べ物を親にねだる声、何か当選したのか喜び声がする。目に様々な色の灯りが映る。聞き飽きた盆踊り唄が流れている。
気づけばお祭りを通り過ぎ、ひっそりと暗いところに立っていた。
その先に、小さな屋台のようなものがあった。惹かれるままに屋台まで歩く。看板には「さよなら売り」と書かれていた。屋台の主はいなかった。屋台の中はもぬけの殻だった。
「さよならが欲しいですか」
声がする。
「500円です」
異世界のように聴いたこともないものを売っているくせに値段だけはちゃんとする。好奇心に逆らえずに500円玉を差し出した。
手のひらの500円玉は消え、代わりに小さな丸い玉が手のひらで光っていた。
何だこれ、としげしげと眺める。

瞬間、目の前がぼやけた。

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