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マッチ

 大晦日の晩、一人のみすぼらしい格好の少女が、マッチの街頭販売をしていました。道行く人に、片っ端から声をかけているのですが、まったく売れません。わたしだったら、少女が寒い中、ハナをたらしながらマッチを売っていたら、一つぐらいは買うと思うのですが、みすぼらしい格好があざとい演出ととられてしまうからなのか、それともハナをたらしているのがただでさえ清潔感のない顔にとどめを刺しているからなのか、誰も買いません。
 売り上げがゼロのまま家に帰ったら、またお父さんにぶたれてしまう……寒いなあ。お腹減ったなあ。もう嫌だ。こんな生活。
 少女は寒さと空腹ですっかり労働意欲をなくしてしまい。やけを起こしてかごからマッチを取り出し、暖炉にあたりたいなあ、と思いながら、一本、しゅっとすりました。
 するとどうでしょう。目の前に暖炉が現れ、暖かさを感じることができました。
 少女は、次はなにか美味しいものが食べたいなあ、と思いながら、マッチをすりました。もちろんいままで食べたことのないごちそうが現れ、少女はそれを堪能しました。
 次はイケメンの彼氏が欲しいなあ、と思いながら、マッチをすりました。すると少女好みの中性的なイケメンが現れ、少女を抱きしめてくれました。彼氏の腕の中で、次はセレブの友だちが欲しいなあ、と思いながらマッチをすりました。すると高級ブランドに身を包んだ、モデルのようなスタイルの美少女が現れ、彼氏とどこかに行ってしまいました。
 やっぱり世の中お金だよな、と思いながら、少女はマッチをすりました。すると、求人広告が現れました。
 少女は求人広告に火をつけ、灰になるのを見届けると、家路につきました。結局この生活を続けるしかないんだ、と、自分に言いきかせながら。

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