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「君がいた夏は遠い夢のなか」

 今日はお祭りらしいよ。
 そんな言葉が、ふっと耳を抜けていった。
 ひぐらしの声と一緒に、熱を帯びた空気がお囃子の音を運んでくる。笛が提灯まで誘っているようで、ひどく酔いがまわったような気になった。
 ひとりでいるはずなのに、なんとなく“みんな”を感じて、ふわふわと熱に浮かされている今日は、どうにもうだるように暑い。私は主役なんて柄ではないが、世界が私を祝福しているようにさえ、今日という日は感じさせる。それが、祭りというものなのだろう。
 主役は、誰かに見られているものである。
 だから、夜の片隅にいるその見物人に私が気付いたのは、彼もまたどこかで主人公だからなのだろうと、漠然と思った。
 夏は日が長いとはいえ、夏至を過ぎているのだから、夏の夜はおそらく思っているよりも長い。祭りには適しているかもしれない夏は、やはり都合がよいものである。
 見物人は、喧騒の輪からはだいぶん外れていた。提灯の灯りが届くには厳しい範囲に位置取りしている。全人類祭りが好きである、なんて暴論を唱える気はさらさらないが、興味がないにしては距離が近く、興味があるにしては距離をとっているものだから、私には理解できないながらも不器用な人なのだろうと、遠くから思う。ただ一点、遠かったのは、私の方かもしれなかった。
 私は見物人に、

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「私は私が嫌いだよ」
「君が嫌いな君のことも、僕は好きだよ」

  • 続けられません
  • あまりにも下手でした
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