地方の弱小領主とは聞いていたが、それにしても屋敷は広い。
屋敷の外観はかなり地味で、いかにも田舎の小貴族の邸宅、という感じがしたが、内装は随分豪華である。
これも”魔術”の成せる業か。
「…調査をしたところ、やはり精霊の仕業のようです。しかも土着の精霊ではなく、余所から来た精霊らしく、とても強力で…」
話を聞き流しながら少女は広間を見渡していると、ふと何かが目に留まった。
”それ”は広間の片隅、他の部屋に繋がる廊下への出入口付近にいた。
「配下の魔術師や外部の魔術師に対応を依頼しましたが、誰も歯が立たず…って、聞いています?」
もしや自分の話を聞いていないのではと、周囲を見回す少女に屋敷の主人は尋ねる。
「…あれは」
少女は屋敷の主人の質問には答えず、広間の隅っこを指さした。
「あぁ、あれですか?」
屋敷の主人は少女が指さす方を向く。
「あれは…まぁ、我が家の家宝のようなものでございます」
普段は別の部屋にいるはずなんですがね、と付け足す屋敷の主人に対し、ふーん、と少女は頷く。
そしておもむろに立ち上がった。