「それに、貴方はこいつの”主人”ではない…」
「まぁ、そうですが…どうして…」
屋敷の主人が尋ねると、少女はクスクスと笑って答える。
「だってこいつは、あんまりにも言うことを聞かなくって、作った魔術師を除けばマトモに扱える人間がほぼいないことで有名なのだから」
貴方だって知っているでしょう?、と少女は屋敷の主人に目を向ける。
ええ…と屋敷の主人は答える。
「だから皆、こいつを扱いきれずに手元で持て余すか、他の魔術師に押しつけてしまうのよ」
少女はふふっと笑うと、屋敷の主人に向き直る。
「…そういえば、依頼ってどんなでしたっけ?」
依頼のことをすっかり忘れかけていた屋敷の主人は、慌てて答える。
「えぇと…簡潔に言えば、領内で害を為す精霊の退治…」
「…並の魔術師では対処出来ないから、私を呼びだしたのよね…」
少女はそう呟くと、少し考えるかのように宙を見上げた。