「正式な主従じゃないから、敬意を示したり命令を絶対に聞いたりする必要もないだろう?」
そう言って使い魔は少女の後を追った。
少女はなら、と話を続ける。
「私だって容赦しないわ…お前が貴重品だろうと年上だろうと、あくまでお前を”武器”として使う」
…まぁ一応”借り物”だから、死なない程度に加減はするけどね、と少女は付け足した。
「分かったわね、”ナツィ”」
「ちょっと待て何そのあだ名」
少女の言葉に使い魔は思わず突っ込む。
少女はふふっと笑った。
「別に良いじゃない、フルネームじゃ呼び辛いし」
おあいこで、私のことは”グレートヒェン”と呼びなさい、と少女は言う。
「”マルガレーテ”だから”グレートヒェン”…魔術の世界ではそれで通ってるのよ」
少女はそう言って後ろを見やる。
少女の後を追う使い魔は、嫌そうにあーそうですかとだけ答えた。
その様子を見た少女はよろしいと言わんばかりに微笑むと、また前を向いて進んで行った。