「…見つからないわね」
森の中を探索し始めて幾ばくか、グレートヒェンはぽつりと呟いた。
「そっちは?」
グレートヒェンは振り向きざまに尋ねると、使い魔”ナハツェーラー”こと”ナツィ”はなんにも、と答える。
グレートヒェンはそう、と溜め息をついた。
「案外見つからないものね」
「そんなもんだろ」
そうナツィに素っ気なく返されたが、グレートヒェンは気にすることなく続ける。
「…別に、簡単に見つかるものだとは思ってないわ」
そんなのだったら、私の元に依頼なんてくるわけないし、とグレートヒェンは言って、ナツィを見つめる。
「そう言ってるお前とてどうなのかしら…まさか、感覚が鈍ってるってことはないでしょうね?」
ずっと屋敷の中に閉じ込められてたし、とグレートヒェンは相手を小馬鹿にするように笑う。
ナツィは思わずそっぽを向いて呟いた。
「やな奴」
「何か言って?」
グレートヒェンは笑顔で首を傾げる。
だがナツィは黙ったままだった。