「…ま、ここまで痕跡が見当たらないのはおかしいんだけどね」
そう言ってグレートヒェンはまた歩き出す。
「人間が住んでいる所には現れた痕跡があるのに、隠れていそうな森の中にはそれといった跡がない」
…まぁ、私が見つけられてないだけかもしれないけど、とグレートヒェンは呟く。
「痕跡が薄すぎて人間には分からない、とか?」
ナツィにそう聞かれて、グレートヒェンはそうかもしれないわね、と頷く。
「留まっている場所に残る魔力がやけに少ない、とか…もしかしたら人工のモノかもしれないわね」
人工精霊なら魔力がその場に残りにくくなるよう作ることができるし、と言ってグレートヒェンは立ち止まる。
「まぁ、今回は精霊退治がメインだから、精霊の正体とかはどうでも良いんだけどね…」
とりあえず、今日はこれぐらいにしておきましょう、とグレートヒェンはナツィの方を向く。
「そろそろ暗くなって来たし…第一かなり寒いし」
さぁ、戻るわよ…とグレートヒェンは元来た道を引き返そうとした。
しかし、すぐ何かに気付いたように足を止める。