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紡げ、詩。【第5話】

「覚えてたんや、そっか…」
”彼”は私の『一年生の頃に、初めて隣になった日』という返答を予想していなかったのか驚いた様子で、嬉しそうにはにかんだ。

私も自然と微笑んだ。
『覚えてる、んだなぁ、これが不思議なことに』

「理由ってある?」

この際言ってしまうことにした。

『私、隼人のこと好きだったからさ』


静寂。
教室の冷たい空気に飲み込まれそうになりながら、
私は爆発しそうな心臓を抑えていた。

「それってやっぱり─そうか─」
少し躊躇いながら、”彼”は言葉を続ける。
「僕らは…」

『僕らは?』
「詩が、このメモにもっと早く気づいてて、
 この日付覚えてるってなって、
 僕が待ってた屋上に来てたら」

『…うん』

「僕が予定通り告白してさ
 両想いに気づけたんかな」

『……うん
 気づけたんだろうね』

「過去形なのが辛いところやな」
そう言って伸びをする。

そう。過去形。
夕日に伸ばされる、私の影。
影は一本しか伸びていない。
いや、一本しか伸ばせないのだ。

【続く】

  • 紡げ、詩。
  • 【第5話】
  • もちろんこれはのんふぃくしょん。
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