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緋い魔女 Act 21

暗闇の中、人影がゆらゆらと動いている。
明かりすらない部屋で、人影はまるで闇の中で目が見えているように本棚の間を歩き回っていた。
この部屋には多くの棚があったが、その中身は魔術書の類が殆どである。
普通の本も存在するが、ここにある本の多くは埃を被って眠っている。
そんな音一つ立たない書庫の中で、人影は当てもないように彷徨っていた。
「ここにいたのね」
闇の中から飛んで来た声に、人影はピタリと止まる。
「明かりもないのに、こんな所にいるなんて」
そう言いながら、赤毛の少女は姿を現した。
少女の右手では燭台が辺りを照らしている。
「探し物?」
そう尋ねられて、グレートヒェンが持つ明かりに照らされたナツィは別に、とそっぽを向いた。
そう、とグレートヒェンは呟く。
「何か用?」
今度はナツィがグレートヒェンに尋ねた。
「…ちょっと話があるんだけど」
グレートヒェンがそう答えると、ああそうですか、と言ってナツィは背後の棚にもたれかかった。

  • 緋い魔女
  • 早くも連載20回目を超えてしまった…
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