一ひらの桜の花が鼻に付く。仄かに懐かしい 人の香りがした気がした。4年前。中学入学 と同時に、今居る世界に違和感を抱いた。今 思えば厨二病なのかもしれない。人間関係に うんざりし入学早々早退続き。帰り道に立派 な遅咲きの桜があった。そこには毎日喧騒を 横目に虚な眼をした女の子が一人。桜に癒し を求める二人。何を話すこともない。ただ一 見変哲のない樹に、不思議な力が宿った。そ よ風が花を散らす。我に返ると涙が流れた。