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紡げ、詩。【第6話】

夕日に伸ばされる、私の影。
影は一本しか伸びていない。

「あ…来たわ…」
”彼”はぽつり、と呟いて、胸を押さえた。

『今日はもう「来た」んだ…早いね』

”彼”は哀しそうに微笑んで、私を見つめた。
「僕が消えるところ、見たくないやろ
 帰った方がいいんちゃう」

『見たくない、けど』

『けど、一緒にいたいから』

私がそう言うと、”彼”は恥ずかしそうに頬を染めた。
…ような気がする。
実際には夕焼けの色と混ざって見えないのだが。

「っ…幸せもんやな、僕は」

最後にふっと笑って、”彼”は夕焼けに完全に溶けていった。

私以外誰もいなくなった教室。
その静けさの中で考えを巡らせる。

あの日、私がメモに気づいて、
屋上に行っていれば─

考えれば考えるほど、
”彼”の存在の大切さが心に染みる。

チャイムが鳴った。

今日も私は、一人で帰る。

【続く】

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