狼の様な姿をした精霊は、先程斬りかかってきたナツィに近付こうとした。
しかし、ボン!という破裂音に反応して動きを止める。
振り返ると、雪煙の中から赤い髪の少女が現れた。
「さぁ! ここまで来なさいよ精霊!」
グレートヒェンはそう叫んで橙色の石ころを精霊に投げつけた。
石ころは精霊に当たると熱を発し、シューシューと音を立てて煙を上げ始めた。
「ほら!」
こっちへ来なさいと大声で言いながら、グレートヒェンは走り出す。
精霊は1つ雄叫びを上げると、駆けて行く少女の後を追い出した。
グレートヒェンは走りながらも、手元にある石ころを幾つも精霊に投げつけていく。
石には1つ1つ術式が刻まれており、魔力を通す事でそれぞれ効果を発揮する事が出来る。
魔力の塊である精霊にぶつける事で、多少なりとも攻撃を与えたり、動きを鈍らせたりしていた。
このまま最寄りの罠まで誘い込めればこちらの勝ちだ。
あとはナツィがこちらに付いて来れていれば良いんだけど、とグレートヒェンは思う。
とりあえず私が…と心の中で呟きかけた時、グレートヒェンの身体は前へつんのめった。