0

緋い魔女 Act 43

精霊は光の壁に体当たりして罠から脱出しようとする。
しかし光の壁はびくともしない。
唸りながら悪足掻きを続ける精霊を、グレートヒェンは見上げた。
「お前の負けよ!」
グレートヒェンがそう叫ぶと同時に、精霊の真上からナツィが飛び込んできた。
「はぁぁぁぁぁっ‼」
ナツィは思い切り黒鉄色の大鎌を振りかざす。
精霊は抵抗する間もなく両断され、光の粒子となって消滅していった。
勢いよく飛び込んだナツィは、そのまま雪原に突っ込んだ。
雪煙が立ち込める中、グレートヒェンは思わず駆け寄る。
ナツィは雪の中に突っ伏していた。
「…」
グレートヒェンに気付いたのか、ナツィはむくりと起き上がる。
「濡羽色の羽根」
グレートヒェンはぽつりと呟く。
「さながら悪魔、ね」
グレートヒェンがそう言うと、ナツィの背から羽根が消えた。
グレートヒェンはナツィの頭に付いた雪を手で払う。
ナツィは嫌そうな顔をしたが抵抗はしなかった。
「それにしてもよくやったわ」
グレートヒェンがそう言うと、子ども扱いするなとナツィは返す。
ふふふ、とグレートヒェンは笑った。
「屋敷に戻りましょう」
グレートヒェンはすっとナツィに手を差し伸べる。
「…そうだな」
ナツィはグレートヒェンの手をとって立ち上がった。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。