精霊は光の壁に体当たりして罠から脱出しようとする。
しかし光の壁はびくともしない。
唸りながら悪足掻きを続ける精霊を、グレートヒェンは見上げた。
「お前の負けよ!」
グレートヒェンがそう叫ぶと同時に、精霊の真上からナツィが飛び込んできた。
「はぁぁぁぁぁっ‼」
ナツィは思い切り黒鉄色の大鎌を振りかざす。
精霊は抵抗する間もなく両断され、光の粒子となって消滅していった。
勢いよく飛び込んだナツィは、そのまま雪原に突っ込んだ。
雪煙が立ち込める中、グレートヒェンは思わず駆け寄る。
ナツィは雪の中に突っ伏していた。
「…」
グレートヒェンに気付いたのか、ナツィはむくりと起き上がる。
「濡羽色の羽根」
グレートヒェンはぽつりと呟く。
「さながら悪魔、ね」
グレートヒェンがそう言うと、ナツィの背から羽根が消えた。
グレートヒェンはナツィの頭に付いた雪を手で払う。
ナツィは嫌そうな顔をしたが抵抗はしなかった。
「それにしてもよくやったわ」
グレートヒェンがそう言うと、子ども扱いするなとナツィは返す。
ふふふ、とグレートヒェンは笑った。
「屋敷に戻りましょう」
グレートヒェンはすっとナツィに手を差し伸べる。
「…そうだな」
ナツィはグレートヒェンの手をとって立ち上がった。