「もしかして契約して欲しいの?」
グレートヒェンはいたずらっぽい笑みを浮かべながら後ろを見やる。
「…どうでも良い」
ナツィはぷいと向こうを向いてしまった。
「何よ、どうでも良いって」
グレートヒェンはナツィに近寄る。
「どうでも良くない訳がないわ」
困った奴、グレートヒェンはナツィの頭を撫でる。
ナツィは暫く黙ってされるがままになっていたが、不意にグレートヒェンの手を掴んだ。
「…別にお前が主人になっても"マスター"って呼ばないからな」
何があっても"グレートヒェン"って呼んでやる、とナツィは語気を強める。
「まぁ」
グレートヒェンはふふっと笑った。
「…やっと"グレートヒェン"って呼んでくれた」
グレートヒェンがそう言ってやっと気づいたのか、ナツィは少しだけ顔を赤らめた。
「ふふふ」
グレートヒェンはその様子を見て微笑むと、行きましょう、とナツィの手を引いて歩き出した。
ナツィも手を引かれるまま歩き出す。
2つの人影は雪が降る森の中へ消えていった。
〈おわり〉