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微睡み想

冷え切った雪の頬を、部屋に流れる微小気流がつかまえた。電網に乗ってやってくる現在時刻に、未だ陽の昇らない朝を感じる。まどろみの中にふんわりと漂いながら、重たい体を持ち上げようとすると、
「わたくしと云う衝動存在を、いかにして赦す?」
夢の中で聴いた意味のない言葉がリフレインした。

ふと窓掛けに目を遣ると、その布の向こうに昏い街灯が見えた。こんな場所に居ついてしまったばっかりに、ともしびが消えるその日まで、道を照らす使命と運命を全うせざるを得なくなった、かなしき働き者であった。その様子を想像すると、不思議と瞼があるべき場所へと戻っていた。
「わたくしと云う衝動存在は、目の前の罪を掬ったのだ」
そんなことを考えながら、また思考の藪へと戻ってゆく。微小気流からこぼれ落ちたツミ人は、一過性の快楽と心の奥底の痛みを求めて、電網にもつかまらない自分だけの衝動存在を起こしながら、雪の頬を少しずつ溶かしていった。

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