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「心配しないで」
ふんわりと笑った彼女の
ブラックコーヒーは北風と触れ合って
やがて細くて白い息を吐き出した

「私は大丈夫だから」
目に光るのは涙か幻か
微かな希望を秘めてまだ頬に残る

「でもね」
少し瞬きをしてから彼を見る
とくん、とわたしの胸の音がした

「ちょっとは私だって寂しいのよ」
ふて腐れた横顔は夕陽に映える
やはり彼は彼女が好きなのだ
わたしは、、、

「まぁそんな風には見えないよね」
コーヒーの缶はゴミ箱に吸い込まれた
がらっがっしゃん、、、

「じゃあね」
彼は頷くことも出来ずにいる
カラスのアホーが耳に遺る


『待って』
彼女の目が見開かれた
「なぁに」

彼は、彼女の、たった一人で在れるのか
わたしは、、、

二人の影が、今、一つになった

わたしの影は、白い息を纏ったまま、
枝だけの並木道を抜けていく

頬に幻が降りかかる
塩辛い幻は、涙のようだった
本当は、涙を、幻だと思いたかっただけなのだが

幻が乾いたら
次の春を見つけに行くことにしようか

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