0

諷喩(ふうゆ)

「月ってさあ、かわいそうだよね」

 埃をつまむみたいな手で、月を持った君は言った。私は首を傾げる。極端な角度で。
「どういうこと?」
「気づいてもらえないじゃん」
「なにを?」
「視線を」
君は草の上に寝転ぶ。自分の視線は月に向けたままだった。
 月と見つめ合う君を、私は見つめる。

 そっかそっか、私ってかわいそうだったんだ。諷喩の向こうに佇んでいる自分がいた。

「いや、かわいそうじゃないよ」
「なんで?」
「だって君に気づいてもらえてるじゃん」
「僕だけだよ」
「君だけで十分だよ」

 私は君を見つめる。
 視線が寂しそうに泳いでいる。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。