「こんな雨の中、傘も持たずに歩いていたからさ」
だからそんな気がして、とわたしは続けた。
黎は無言で自分の腕の中のロヴィンに目を向けた。
また路地裏に沈黙が流れる。
…なんていうか、また微妙な空気になってしまった。
でも、実際に会話して、この人は意外と喋るんだなと思った。
一応喋るって前に聞いているけど。
…その気になったら、仲良くなれるのかもしれない。
「…ネコ、好きなの?」
仲良くなれそうな気がして、わたしは何気なくそう尋ねてみた。
だが彼は怪訝そうな視線を送る。
「…ソレ聞く必要ある?」
「え」
わたしが思わずそう言っても、気にせず彼は話を続けた。
「…お前と話す気なんかないし、関わりたくない」
「どうして…」
わたしが言い終える前に彼は答える。
「シンプルに関わる気がないだけ」
相手がどう思うか知ったこっちゃないし、と黎は付け足した。