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ラボルト

「2年になって最初の課題は石膏デッサンだっけな」
ふと、美術科に通うきみは言う。
「実は高校入ってから石膏デッサンは1回しかやってないんだよね」
「ふーん」
普通科の学校に通っていたぼくはうなずくことしかできない。
あの子はよく学校での出来事を語ってくれるのだが、いかんせんぼくは一般的な学校(と言っても大分環境が特殊だったが)に通っていたため、理解しきれないことも多い。
ついでに他人の課題のことなんていちいち覚えていられない。
「最初の方に石膏を描いたくらいだよ…何て名前だっけ」
あの石膏像、ときみは呟く。
「何だったかな」
前に調べた気がする、とぼくはスマホでWikipediaを開いた。
「写真、撮ったはずなんだよな」
そう言いながらきみはスマホのカメラロールを漁る。
「確かポセイドンの身内だった気がする」
ぼくはWikipediaの「ポセイドン」のページからその妻「アンフィトリテ」のページに飛んだが、石膏像についての情報は得られなかった。
面倒だな、と思いつつぼくはGoogleを開いた時、きみは急に言った。
「そうだ、”ラボルト“だ」
そう言いつつきみはぼくに石膏像の写真を見せる。
あーこんなだったね、とぼくは答える。
「コイツポセイドンの嫁なんだよ」
「へー」
そう呟きながらきみはこの部屋を後にしようとする。
「コイツ鼻が嘘くさいんだよね」
発見当時欠けてたのを直したらしい、ときみは付け足す。
「だから整形したみたいな鼻なんだよ」
「ふふふ」
ぼくは笑いながらきみの後を追う。
「元々はパルテノン神殿の破風の一部だったんだって」
「破風?」
何それ、と君は聞く。
「破風…って何だったけな」
よくよく考えたらよく分からない、とぼくは呟いた。
「でもパルテノン神殿か」
行ってみたいな、パルテノン神殿、ときみは呟く。
「いいね」
ぼくはそう笑って答えた。

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