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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 8.イービルウルフ ⑦

「ていうか遅いぞ、稲荷」
稲荷、と呼ばれた少女はふてくされたような顔をする。
「だって部活が長引いて…暇な野球部とは違うのよ」
「は⁈ 暇ってテメェ…」
今日はたまたま部活が休みなんだよ、と師郎は言い返す。
「お前が入ってる演劇部は公園が近いから忙しいだけだろ?」
「弱小野球部だって試合の直前だけ頑張ってるクセに?」
いつしか2人の会話は言い合いになってしまった。
どうしたものかと見ていると、黎が黙って師郎の服のすそを引っ張った。
「…お、どうした?」
師郎はすぐに振り向く。
「…ケンカしてる場合じゃない」
黎の一言に、お、そうだったなと師郎は我に返る。
「やっぱり身内には甘いのね」
稲荷と呼ばれた少女はそう言ってため息をついた。

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