「それにしても稲荷」
師郎が不意に話し出したので、皆の視線が師郎の方に向いた。
「いつまでそこに立っているんだ?」
そろそろこっちに来れば良いのにと師郎は地面を指さす。
「あ…そうね」
そう言いながら稲荷さんは土手からこちらへ降りていった。
「それにしても、彼女が異能力を知ってしまった一般人ね…」
稲荷さんはそう言いながらわたしの顔を覗き込む。
「想像よりも平々凡々ね」
うぐっ、とわたしはうろたえた。
まぁ、そうかもしれないけれど…
「そ、そう言えば、稲荷さんの異能力ってどんなのなんですか?」
師郎の異能力に似てるとは聞いてたけど…とわたしは続けた。
稲荷さんはそうねぇ、と答える。
「私の異能力は…”一定範囲内の人間に見える自らの姿を別のモノにする”能力、と言えば良いかしら」
簡単に言えば、誰かに化ける能力ね、と稲荷さんは微笑んだ。