「え、えーと、稲荷さん?」
わたしはビックリし過ぎてそれ位しか言えなかった。
「まぁ稲荷 鏡子だけど…今のわたしは”ヨウコ”」
面倒臭いだろうけどその辺よろしく、とマゼンタ色の目の稲荷さんことヨウコは笑った。
「それはそうとして」
そう言ってヨウコは目を光らせるのをやめた。
「常人だから大丈夫だと思ってたけど…全然だったわね」
正直見くびってた、と稲荷さんは呟く。
「えーと、これはどういう…」
わたしはどういう事なのか聞こうとしたが、すぐに背後に気配を感じて振り向いた。
「!」
真後ろにいる誰かに肘が当たった。
するとその誰かはおっと、と後ろに下がった。
そしてその姿はすぐに見覚えのあるものに変わった。
「え、師郎⁈」
わたしは思わず声を上げた。