風の吹かない箱庭
猜疑の概念を抜き取られた私を
嗤いつつも掬って下さった冷血の掌
あの方の瞳に宿るのは
不遜と軽蔑と怒り
きらきら眩い 生の希求
あの方の唇に宿るのは
傲慢と高潔と焦燥
くらくら燻る 未知への渇望
私を導くのは彼
お父様ではなく彼
林檎の樹の下 秘密のサロン
あの方が暴いて下さる世界の裏側
あの方が見せて下さる御空の続き
骨の欠いた片割れと踏み入れた壁の外
思考の種に満ち溢れた世界の裏側
瞬きの度に色を違える御空の続き
そんなものに意味などなかった
昏い色したあの瞳の
冴えて燃える澄んだ光がないのなら
薄く捲れたあの唇から
紡ぎ出される甘い調べがないのなら