「南の町でまた襲撃があったんだって」
悪魔が2人もやられたってよ、と古びた屋敷の小さな部屋で金髪の人物は言った。
「ねー聞いてるのー?」
金髪の人物は目の前にいるメガネの人物を揺すった。
メガネの人物はむっくりとテーブルから起き上がる。
「…聞いてる」
ホントにー?と金髪の人物は首を傾げる。
「そう言ってる時に限って聞いてないこと多いじゃんぼすー」
ぼす、と呼ばれてメガネの人物は不機嫌そうにそっぽを向く。
「…ぼすって呼ばないでって前に言ったじゃん」
もうそういう立場じゃないから、とメガネの人物は呟く。
「わたしはもうそういう偉い奴じゃないんだ…天から落とされたダメな奴…」
そう言いつつ、メガネの人物はまたテーブルに伏せようとする。
「…そんなことばっか言ってんじゃねぇ」
不意に部屋の入り口から声が飛んできた。
2人が見ると、帽子を被った人物が立っている。
「あ、アモン」
金髪の人物は呟く。
「そういうことばっか言ってると体に悪いぞ」
ただでさえお前は弱っているのに、と帽子の人物ことアモンはテーブルに近づき席に着いた。
「それでも前天使長か」
「うっ」
メガネの人物はたじろいだ。
「…それ、1番聞きたくない」
わたしの黒歴史…とメガネの人物はそっぽを向く。
なんだよ、とアモンは脚を組む。
「お前らしくないな」
「それはもう1人のわたしだよ」
メガネの人物はぽつりと呟く。
「もう一人のわたし、ルシファーじゃない何か…全部、あいつのせいだ」
天界がああなったのも、わたしが堕ちたのも、とメガネの人物はまたテーブルに伏せった。
帽子の人物は呆れた表情をする。
金髪の人物はそんなこと言わないで、とルシファーの頭を撫でた。
ルシファーはされるがままになっていた。