「あなたは学校の屋上で桐谷さんと倒れているのを発見され3時間ほど眠り続けていたんです。」
もはやどんな言葉も雑音にしか感じられず、内容は微塵も入って来なかった。
“だって…俺はあの時…白い光に包まれて…”
しかしその光のあとの記憶がまったくなかった。
そうやって回想するのを医者と看護師は待っているようだったが、その沈黙を突き破るように喪黒の母が病室に乱入する。
「闇子!なんで人様に迷惑かけるの!」
問答無用の怒号が飛んだ。
わかりやすい恐怖を感じてるわけではないがひたすらに理不尽に晒されるのもここまでくると新手の悪夢である。
「まぁまぁ、お母さん、娘さんもおそらく倒れた衝撃で記憶が混濁しているのでしょうし、ここはひとつ我々にお任せいただけないでしょうか」
自分がその怒号の対象者であることすら忘れて完全な他人のヒステリーを見ている気分で、医者の対応に感心していた。
しかしその瞬間に当事者に引き戻される。
「すみません、先生、あんたも!頭下げなさい!」
「っつ…」
頭を捕まれ起き上がったばかりの体が強く曲げられた。
どうにかその場は収まる形に収まり、
その後俺、もとい、私は脳への影響の懸念からMRIなどの検査を受けて、1泊だけ入院し翌日、あのヒステリー母に連れられる形で退院した。
自分が別人になっているというこの状況は到底受け入れられるものではなかった、それでも、形はどうあれ生きられただけでも良かったと思うことにすることでどうにかやり過ごした…つもりだった。
しかし、次の日学校に行くとそこには
いつもと変わらない生活を送る俺の姿があった。
“あれは…一体…誰なんだ?”
to be continued…