「おい!どうなってんだ!てめぇ、一体誰なんだよ!」
思わず“俺”の胸ぐらを掴んでしまった。
「おいおい、陰キャが青路に何の用だよ!」
近くにいた小橋健太郎が嘲るように俺を蹴り飛ばす。
「痛…何すんだよ!健!」
「あぁ?クソ陰キャが気安く名前で呼んでんじゃねーよ」
今の姿のことも忘れて思わずいつもの名前で呼んでしまった。
「あ、ごめん…」
「そういうとこがキモいんだよお前!」
いつも見てきた健太郎の顔がこんなにも怖く感じるものだったのかと改めて置かれた状況に困惑する。
「はっ、ちょっと責めたらすぐこれだよ!陰キャとのコミュニケーションは難しいなぁ!」
俺、いや私が困惑した隙をつくように健太郎は煽り立ててくる。これでこちらが殴りかかりでもしたら完全にアウトである。だからといって黙ってる訳には…
「まぁまぁ、その辺にしておいてやれよ」
教室に現れたのは橘蓮だった。彼もまたいつも一緒にいたメンバーだったが今は輝くヒーローにすら見えた。
「蓮もこう言ってるんだからさ、“闇子ちゃん”を攻撃すんのはやめてあげようよ、元はと言えば俺の“罰告”が原因なんだろうからさ、でしょ?闇子ちゃん?」
彼の言葉に続いて“俺”が健太郎を制した。しかも何やら言いたげな表情だ。
「う…うん…」
「まぁなんだ、悪かったな喪黒さん」
「え?あぁ…うん」
もはや状況への混乱と“俺”の表情に何も頭に入らず、生返事が精一杯だった。
そうして授業中は慣れない席、慣れない道具に四苦八苦しながらどうにかやり過ごした。
昼休み
「闇子ちゃん、昼一緒に食べない?」
“俺”から声をかけてきた。
「何の用だ、こないだの“罰告”の続きか?」
用があるのは明らかに私の方だったが、周囲の目もあったため“俺”は俺らしく“闇子”は闇子らしくなるように意識して返答した。
「それもいいね、でももっと大事な…」
そっとメモを私の目の前に見せてきた。
『体の入れ替わり』
その言葉に思わず反応してしまう。
「気に入ってもらえたみたいだね、また屋上でいいかな」
「わかった」
もはやそう言う以外の選択肢はなかった。
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露骨な表現を含みます。
苦手な人は見るのを避けてください。