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ある人の帰路

踏切に足を止められていると、ふと、目の前の少女に惹き付けられた。手提げの通学バックをリュックのように背負い、ヘッドフォンをした、ストレートボブの女子高生である。ただそれだけなのに、なぜこんなにも惹き付けられるのか。踏切が上がり、少女は歩き出した。スマホを操作し、彼女のイメージに合った曲をかける。もう少し彼女を見ていたい。少し遠回りして帰ることにする。ヘッドフォンをしているからであろうか。いや、そうじゃない。彼女を構成する、すべてが惹き付けるのだ。少女が一瞬振り返り、顔が見えそうになる。いいや、君は、振り返らなくていいんだ。その後ろ姿から想像するのが楽しいのだから。今度は、にわかに少女が足を止める。バス停だった。完璧だ。ここに、1枚の絵画が誕生した。手提げの通学バックをリュックのように背負い、ヘッドフォンをした、ストレートボブの女子高生が、バス停でバスを待つ。なんと美しいんだ。感嘆のため息がもれる。しかし残念なことに、ここで彼女とはお別れだ。怪しまれぬよう彼女を横目に見ながら通り過ぎる。とてもいい時間を過ごさせてもらった。礼を言うよ。
いつの間にか、彼女をイメージしてかけた曲は終わっていた。

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