“こんなに上手くいっていいのだろうか”
親にも同級生にも否定されてきた私にとってはこんなの初めての経験で、にやけるのを精一杯堪える。
「すみません!遅くなりました!」
“私”が教室に駆け込んでくる。
髪は乱れ、制服も着崩れとは違う乱れ方をしたその姿はさながら激昂した後といった感じだ。
“なるほどよくできている。ならばこれに合わせて”
「あーあー、大丈夫か?闇子ちゃん、何があった」
そう言って席を立ち、駆け寄ろうとする。
そして同時に2人に目配せをする。
大切なのはただ目立たせるのではなく、喪黒闇子が復讐する可能性があることをを強く植え付けることである。
「こ、これは酷い…」
三文芝居を演じる桐谷青路を演じる。
言っててもパニックになりそうな状況だ。
「先生!ちょっと3人で保健室まで運びます!」
小橋は教師を煽るように教室を出た。
「大丈夫だから!1人でいい!」
“私”の方も状況と狙いがわかったようであえて抵抗する
「サボるのに丁度いいだろうが、陰キャブスが口答えしてんじゃねーよ」
小橋は“私”の口元を掴む。
「ひ…ひひゃい…」
「顎を細く見せてもブスはブスだな」
執拗なまでの攻撃、なんなら悪口の勢いは増していた。
「一応、形式的には保健室まで連れてくぞ」
橘は面倒くさそうに会話を区切る。
「それにしても青路、お前一体何を」
そして俺に話を振った。
“なるほど、大人しくついて来たのはそれが狙いか”
2人は同じことを察し、目配せをする。
「なぁに、ただ罰告、つまりは嘘だったことを責めてきたから言ってやっただけさ、外見も中身もブスなお前が告られるはずないだろって」
言っていて涙は出なかった。何せ事実、いや、本音だったからだ。なのに、なぜか目の前の“私”は泣いていた。
“いやいや、なんで?なんでお前が…あぁ、演技か、いやそれにしては上手すぎやしないか?”
「あぁもう!分かったらこれ以上関わるな、いいなっ!」
小橋は居づらくなったのか、早く切り上げたそうだった。
しかしこのままでは復讐の理由はできても、復讐の機会が皆無だ。
「そこまで言ってやるなよ、元はと言えば俺らのノリのせいだ。今度何か奢ってやるよ」
橘…全てにおいて完璧すぎる…
to be continued…