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忘却の彼方へ

目を閉じる瞬間に

「入る」
 
……と思う


その瞬きで 私の中に残る感覚がする


『カシャッ』



引き金を引いたら 心に残ってく

覚えなきゃいけないこと

……もちろん、

忘れたいことも



瞼が閉じる前に私を止めてくれたら

私の睫毛が震えていることに気付いていたのなら


止めて

止めて、ほしかった


『覚えなくていいんだよ』

その言葉がほしかった



瞬きをする瞬間

「入る」 と思った

その瞬きで私の中に残った

数々の忘れたいことが

アルバムに残った



破れない写真 破り捨てたはずの写真

忘れたい 忘れたつもりだった

黒さと濃さは相変わらずで

これは残すべきでないと思った


でも間に合わなかった



『カシャッ』


今までで一番重い引き金だった

  • 異端児たち
  • 私にはこの能力はありませんが…
  • 写真記憶
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  • 参加ありがとうございます。
    高い記憶能力って憧れますが、なるほど忘れることが困難というのは、副作用にもなり得るものですね。
    『しなくても良い』という言葉は、時にただの応援より効果的な励ましになるものですが、使い分けって難しいものですよね。
    記憶能力は実在する異能としては割とメジャーですが、メジャーであるからこそ物語の題材にしやすくて、書いてても読んでても楽しいです。