結局、昨日はわざわざうちと反対方向にある友人の家まで、奴を送ってやることになってしまった。これはそれなりの返礼を期待しても罰は当たらないだろう。
そんなことより、今日は週に2度しか無い部活の日だ。気持ちを切り替えていこう。
そう思っていたのに、今日の部活は無くなってしまった。どうやら学校の近くに不審者が出るようになったから、遅くまで学校にいないでさっさと帰れって話らしい。
「まったく、ひでえ話だよなァ? 毎日部活がある運動部の連中なんかは喜んでたけどよー」
俺と同じ部活の友人も文句を言っている。
「お前なら、別に学校にいられるんじゃねーの?」
「いたところで部活そのものが無いんじゃ無意味だろ」
「それもそうだ」
校門前で友人と別れ、一人家路についた。学校で不審者の話なんぞ聞いたものだから、どうしてもビビる気持ちが心の隅にある。
近道をしよう。そう思い、大通りを出て時間の無い時によく使っている細い道に入った。
そして、離れた場所に立つ人影を見つけてしまった。
黒いパーカー、青いキャップ帽、使い捨てマスクで顔はよく見えないが、俺より少し背が高いくらいの、多分男。その風貌が既に不審者だと物語っている。学校を早上がりにさせられるほどの不審者が俺の前に現れた。その事実が、俺を一気に恐怖のどん底に突き落とした。