4人で揃って教室に入る。
どう考えても男子3人がサボっていることを示しているがこの教室ではその光景はサボりなんかよりもずっと大きな違和感を意味していた。
「橘、小橋、桐谷、お前らまさかサボってたんじゃないだろうな」
「まさか!ちゃんと保健室まで送ってましたよ」
「その割に喪黒も元気そうだが?」
「そりゃあ、僕らが頑張って…なぁ」
「そうなんです!先生!ただ誤解を解いてただけなんです!」
多分これはやらかしている
完全に私だけが浮いている
しかしもはや後には引けなかった
同じように“私”も覚悟を決めた目をしていた。
「そこに少し仲裁で入ってたんですよ、なので勘弁してくださいよ先生」
口を開きかけた“私”を制止して橘がそこをまとめる。
この瞬間、教室がざわついた。
正体不明の違和感はこの授業が終わるまで続いた。
一部の女子ではその日中その話題で持ち切りになっていたようだが。
「あんたさぁ、何なの?さっきの態度」
予想通り彼女達は“私”に突っかかる。
傍から見ているとセリフも何もかもが典型的すぎてもはや笑みすらこぼれる。なぜならこの後、
「やめてやってくれ」
そう言って橘が現れるのだから
何の冗談だろうか、いつもは私をいじめていた女子共が味方だと思っていた男に裏切られる。
しかもそれによって守られるのが“私”だなんて
しかし同時に私もかつてないほど滑稽だった。
自ら望んで体を入れ替え、復讐の機会を伺って
そのうちにあろうことか“私”が救われてしまう
それも自分が復讐しようとしていた相手に救われたというのだからどうしようもない。
思わず笑みがこぼれてしまう。
“これで復讐が終わっていいのか?”
体が私に問いかける。
“受けた屈辱は1度救われたくらいで報われるのか?”
かつて私の体にあった傷の位置が痛む。
いや違う、これは彼の傷だ…
『桐谷君の…復讐心だ…』
頬を伝う涙に禍々しい熱がこもる。
to be continued…