「やめてやってくれ」
彼のその一言は荒ぶっていた女子陣を黙らせるには十分だった。
当然彼らは笑っている。
その態度は火に油を注ぐようなものだ。
女子陣は激昂しそうな感情を押さえ込んでいる…がそれも限界に達した。結果矛先は向いてはいけない方向へと…
「どうして!?どうして、そんな女を!そんな…ただの陰キャ…いや…根暗クソ陰キャなんかを!」
女子陣のひとりがそう叫び、橘に向かって拳を振りかざす。橘は避けるでも止めるでもなく、そのまま喰らう。
目の前で起きたまさかの事態に俺は言葉を失った。
そしてその沈黙は数秒続いた。
全員が我に返った瞬間に彼女は泣き崩れる。
嗚咽の中に籠る謝罪の中に“闇子”の影もなかったが、特段気にすることはなかった。
その光景にまた全員が次の言葉を探しながらもそれを見つけられずにいる時間が流れる。
実際の時間はものの数秒なのだが体感はとても耐えられない程に長く感じられた。
「何か言ってよ…ねぇ!蓮!なんか言いなよ!」
嗚咽が落ち着いたのか、さっきよりも聞き取りやすい
それでも橘は何も言わない。
「どうして何も言わないの!」
彼女の怒りは何となく次のフェーズに入ったようだ。
今なら多分この体くらいは逃げられるとも考えたが刺激する可能性は避けるのが妥当だった。
「おい…━━━━━━━」
たまらず小橋が橘に耳打ちをする
橘は少し笑って小橋を制し、そっと彼女の元に歩き出す
グッと顔を近づけ、今度は橘が彼女に耳打ちをする
少し間が空いて、彼女は驚いた顔で飛び退いた。
内容はわからなかったが、彼女の涙が止まった様子からして私に関する何かであろうとは想像が着いた。
「分かったら今日はもう帰ってもいいかな?青路のおかげで“闇子ちゃん”に奢らなきゃいけないからね」
「おいおい」
“俺”はやや反応が遅れながらも愛想笑いを浮かべる。
そうして放課後の第1幕が終わった。
“しかし…あの時彼は一体何を…?”
to be continued…