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能力者夜を往く その②

今気付いたけれど、彼女が持っていたのは馬鹿でかいノコギリだったらしい。刃を折りたたんでいるとはいえ、こんなもので殴るなんて、まともとは思えない。そして、そこそこ重そうなそのノコギリをあんな風にぴたっと止める筋力がこの少女にあったことも信じられない。
「……着いた」
土手をしばらく下流方向に進んでいると、不意に少女がそう呟いた。しかし、目的地らしき場所はどこにも見当たらない。
「着いたってどこに……」
その時、空中の何もない場所から、人間の腕が2本伸びてきた。反応する前にその腕は私たち2人の首根っこを掴み、どこかへ引きずり込んでしまった。
数秒視界が暗転した後、次の瞬間には、見慣れない屋内空間にいた。屋内空間と言っても、窓ガラスと天井の蛍光灯は一つ残らず割れているし、壁紙は剥がれていて、至る所に瓦礫とゴミが転がっている。建物というよりは廃墟って感じだ。
「ここは……」
突然のことで記憶が少し混濁していたけど、謎の腕に掴まれてどこかに引きずり込まれたことを思い出し、あの時掴まれた首の後ろに手をやる。謎の腕はまだ、自分たち2人を掴んだままだった。
「あっとすまない。今離す」
そう言って手を放してくれた謎の腕の主は、声の感じからして男性なんだろう。振り返って顔を合わせてみると、そこにはやけに背の高い男性がいた。いや、自分の身長と比べてみると、175㎝くらいだろうか。さっきまで見ていた少女の背丈がいやに低かったから、目が慣れていないんだろう。
「突然こんなところに連れ込んでしまってすまんね。俺の能力はちょっと特殊だからな」
「はぁ……」

  • 能力モノの小説を書きたい欲が高まって来たので
  • ノコギリは筋力と技術で止めました
  • 別に止めなくても問題は無かった
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