あの少女も言っていたけれど、能力ってのは何の漫画の話だろう? しかし、今起きた現象なんかを考えると、その『能力』ってのはやっぱり実在すると考えるしか無いんだろう。
「それで、お前も同類だから、せっかくだから顔合わせしてやろうってことになったわけだ」
少女が話を続けた。
「はぁ……。……同類?」
私も能力とやらを持っているとでも言いたいのだろうか。
「そう、同類。トモちゃんが言ってたんだから間違い無い」
またトモちゃんなる名前が出てきた。
「そのトモちゃんって、誰?」
「わたしわたし、私がトモちゃんだよー」
明るくて軽い感じの女声が、割れた窓の方から聞こえてきた。
「…………⁉」
あの男の人が、ひどく驚いたような表情をしている。
「……ここ、3階なんだが……」
「うん、そうだね」
「そうだね、じゃねんだ。どうすりゃ窓から入って来れるんだ」
「え……こう、上手いこと、よじ登ってきた」
「わぁい、トモちゃん」
少女はそう言って『トモちゃん』に駆け寄り、高い高いをされてはしゃいでいた。
「あー、そんなことより、ちゃんと連れてきたんだねえ」
『トモちゃん』はあの少女を持ち上げたまま、こっちを見てにこにこしながらそう言ってきた。
「はじめまして、私のことはトモちゃんって呼んでくれていいよ。みんなにもそう呼ばせてるし」
「あ、はい。どうも……」
トモちゃんは飽くまでにこやかなのだが、何故か恐ろし気な雰囲気を醸していた。どうにも気後れして、握手しようとしたのか差し出された手を握り返すことはできなかった。