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能力者夜を往く その④

(……ん?)
ふと覚えた小さな違和感。トモちゃんは少女を高く掲げ、そのまま握手を求めてきている。いくら何でも、女の子の力で少女一人を支えることなんてできるんだろうか。持ち上げられている方の少女に目を向けると、確かに2本の腕でしっかりと腰の辺りを支えられている。
(…………んん?)
差し出された手の方に視線を戻すと、自然と彼女が片手を腰に当てているのが目に入った。
「……ッ⁉」
違和感の正体がようやく理解できた。寧ろ何故今まで気付かなかったのか。腕が多すぎるんだ。
トモちゃんは、突然飛び退いた自分のことが良く理解できていないかのように首を傾げている。まさか、これが『能力』ってやつか?
「えー……っと、トモちゃん……さん……?」
「はいはいトモちゃんです」
「トモちゃん、も……その、能力者……だったり……?」
「うん、そうだねえ。私はねぇ、同士のことが分かるんだ」
どうもおかしい。てっきり、腕のことについて何か言及されると思っていたのに。
「あーっと、つまり?」
「簡単に言うとねえ、能力者がちょっと光って見える」
「それじゃあ、その腕は?」
「うで?」
トモちゃんは自分の両腕をしばらく見つめ、ようやく思い出したように少女を自分の腕で支え直し、床に下ろした。
「で、腕って何のこと? 私の腕、別に変な形してないと思うんだけど……」
「いやいや、今あからさまに起きていた怪奇現象の話なんですが……」
「?」
何故理解してくれないのか。
「……あ、でも」
何かを思い出したようだ。
「君みたいな反応をした子が、もう一人いたなぁ。もうちょっと怖がってたけど」
どうやら、おかしいと思ったのは自分だけでは無いらしい。
「その人は?」
「んー、あの子は夜が好きじゃないからなァ。夕方にでもここに来れば、あるいは会えるかも?」
「そうなんすか……」
とりあえず、その人と会った方が良いだろう。トモちゃんの周りでゆらゆらしている正体不明の腕をいつまでも放置しているのは不気味でならない。少しでもヒントが欲しい。

  • 能力モノの小説を書きたい欲が高まって来たので
  • 能力では無い超常現象
  • トモちゃん:能力者を判別する
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