「そろそろ門限なので帰ります」
5時を少し過ぎた頃、宮城さんはそう言って帰り支度を始めた。せっかくなので私も一緒に帰ることに。どうやら千葉さんも同行してくれるようだった。
「それでは行きますか、宮嵜さん、茨城さん」
「はーい」
「千葉なんだけどなぁ……」
軽い世間話をしながら、帰途につく。そんな中、ふと思い出して千葉さんに訊いてみた。
「千葉さん、あの溜まり場、どんな風に見えてますか? 私たち二人の眼はちょっと頼りにならなくて……」
「どういうこと? まあ……家具らしき家具が全く無いことについては、ちょっと気になるよね。テーブルや収納やベッドすら無いんだもの。どうやって生きてるんだろ」
「そんなひどかったんですか」
そう宮城さんが反応する。私としては、見えているものの数倍良い状況だったから特に反応することでも無かったけれど。しかし、たしかに家具が全く無いというのは気になる。
「えーっと、どうも不思議な反応だけど、ミヤシロさんにはどんな風に見えていたんだい?」
「本棚とかテーブルとかソファとか、普通におしゃれな部屋だなー、って感じの部屋でしたね」
「霊感があるとそんな風に見えるんだ……」
「ちなみに、宮嵜さんからは廃墟みたいなボロボロの風景が見えているようです」
「それはつまり、どういうこと……?」
千葉さんは首を捻っているけれど、私にもよく分かっていないんだから説明のしようが無い。
「ちょっとよく分からないですねー」
「そうなのか……」
歩いているうちに、昨夜あのオバケから隠れるときにお世話になったお家の近くを通りかかった。
「……うげぇ、この家、すごいことになってますね」
宮城さんがそう呟いた。
「え、何が見えてるんですか」
「庭は何かに守られてるんじゃないかってくらい何もいないのに、家の方は何かに呪われてるのかってくらい大量のものすごいモノに引っ付かれてるんですよ」
庭だけが正常っていうのは、もしかしてあの柴犬のおかげなんだろうか。それより、すぐ近くにそんなものがいるところに隠れていたのかと思い返すと、全身に鳥肌が立った。今後は深夜に出かけるのは控えた方が良いかもしれない。