部屋の中を探しても、宮城さんは見つからなかった。代わりに、彼女の靴が既に玄関に無いことを発見した。
部屋を出てみると、宮城さんはすぐそこで待っていた。
「ども、宮嵜さん。帰りご一緒させてください」
「あっはい」
何だか覚えのあるやり取りを交わし、雑談しながら帰途につく。
「……あの、宮嵜さん」
世間話の中、唐突に真剣な声で宮城さんが私の名前を呼んだ。
「何ですか、宮城さん」
「宮嵜さんの能力について、一つ考えたことがあるんです」
「はい」
「たとえば、宮嵜さんには扉の肉塊が見えませんでしたね」
「まあ、そうですね」
「でも、部屋の中にいたあの人影は見えてた」
「……? あ、あれか」
そういえばそんなのもいたっけ。ほとんど忘れていた。
「私の『眼』で見た限り、あの人影は相当の悪霊だったんですよね。見えないフリしなきゃ詰みでした」
「扉の奴は?」
「ただそこにいるだけの、只管気持ち悪いやつです。生理的に無理ってやつです」
「それで、宮城さんの考えとは?」
「はい、もしかして、相手の危険度によるんじゃないかと。ヤバい奴だけ見えるみたいな」
「ふーむ……あ、そういえば、宮城さんに似たオバケに会った時の話なんですけど」
あの日の柴犬の話をする。謎の獣のオーラ、柴とは思えない吠え声、オバケを退散させたことまで。
「ふーむ? それなら、危険度というよりはその純粋な強さといった方が良いんでしょうか?」
「どうなんでしょ……可能性の一つとして頭に入れときましょう」