一生懸命に描いた言葉たちが、少しずつ、薄れて、消えてゆく。それをわたしは心の扉を閉めて無心に見る。
息をする。だけど、上手くいかない。大丈夫、大丈夫と言い聞かせるほど苦しくなって、死んでしまいそうになる。
やめてとも声に出せず、涙と薄い二酸化炭素だけがわたしから逃げ出してゆく。時計の針の動く音が止まらない。
まるで夢の中をこえて、どこか違う世界に来たかのようだ。
悲しいや寂しいの感情を失い、目と耳から入る情報をどうにか受け取ろうとする。脳に送るまでの道のりが異様に長く感じる。
どうしてだろうか。どうして、どうやってこんなことになったのか。おまえは誰なのだ。わたしの大切なものたちのどこが気に入らなかったのか。何を求めているのか。
わたしは頭の中で問いかける。
そいつは答えない。
最後の一文に差し掛かったとき、ようやく手を止める。
ゆっくりと、ゆっくりと振り返る。
おまえは、わたしよりも、泣いていた。