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無能異能浪漫探訪② 太陽は確実に存在する

ある日曜日の午後のこと。心霊スポットと噂されている近所の古いアパートに向かった時のことだった。
斥候気分で少し離れた位置から双眼鏡で監視していたその時、俺より少し年下くらいの、多分中学生くらいのガキが一人、アパートの前で立ち止まったんだ。何となくそいつを見ていると、そいつは周りを軽く見回してから、軽くジャンプした。
そいつはたしかに、ほんの軽―く跳び上がっただけだったんだ。そんなに膝を曲げていたわけでも無かったし。にもかかわらず、奴はあっという間に3階まで跳び上がり、通路に侵入してとある一室に入って行ってしまった。
あれはつまり、そういうことだよな? どんなに跳躍力がある人間でも、たったあれだけの予備動作で数mも跳び上がれるわけが無い。それこそ、神がかり的な何かがあの中学生に味方していたとしか考えられない。
これまで抱えていた朧げな信仰心が、ようやく明確なビジョンを取ったようだった。
速攻で双眼鏡を肩かけ鞄に仕舞う。せっかく見つけた『そっち側の世界』の手がかりだ。逃がしてなんてやるもんか。
勿論全力移動でその古アパートへ。奴の入った部屋は把握しているし、ロクなセキュリティも無いから、階段を駆け上がればその部屋まで楽に突撃できる。
足音を忍ばせつつも可能な限り素早く3階まで駆け上がり、通路に飛び出そうとして咄嗟に物陰に身を隠した。例の部屋の前にさっきの奴と同年代くらいの女子が二人、屯しているのが見えたからだ。
同じ部屋が目的地っぽいし、奴らもあの中学生の関係者か? となると、奴らからも何か情報が得られるかもしれない。せっかくだし、接触してみるか。

  • 無能異能浪漫探訪
  • この少年も一応既出ではある
  • ちなみに第2部(未投稿)のメインだったりする
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