俺にはなんだか不気味でならなかった。
あの日、青路が一日だけ休んで復帰した日
えも知れぬ違和感をまとった彼の姿、そして彼の胸ぐらを掴むクラスの女子、喪黒闇子。
全てが自分の理解を越えた世界であることだけが突きつけられた。心は…震えていた。
とにかく止めないと!
体が自然と動き出す。
「まぁまぁ、その辺にしておいてやれよ」
この一言で健太郎が止まるのは予想通りだ。
不安なのは青路と喪黒さんが止まるかどうかだけど…
「蓮もこういってるんだからさ…」
青路が健太郎を制した。その光景が信じられなかった。
別に制したことに驚いてる訳じゃない。その時の青路の表情が何かを企んでいるように見えたことが驚きなのだ。彼が何かを企んでいるのは初めてだったし、それまでその予兆ひとつ見たことがない。
何より、それは喪黒さんに向けられている。
その昼、嫌な予想の一端が当たった。
『青路が屋上で喪黒さんに何かをした』
その何かは分からないが彼女がボロボロで遅れて登場したことを目の当たりにした時は動揺した。
こういう時の健太郎は本当にさすがだ。
すぐに教室を出て、悪口もスラスラ出てくる…
止まらなさそうなので区切る、これが結局いつもの僕の役目だ。とはいえ気まずさを区切ることはできない。仕方なく青路に話を振る。あわよくば青路の違和感の正体に迫れればと思ったが。
青路が何かを隠すように言った(おそらく)悪口に、喪黒さんが泣き出すという展開になってしまった。
“んー…収集がつかん…”
そう思った頃には口が動いていた。
「今度何か奢ってやるよ」
これでひとまず場が落ち着いてホッとした。
教室に戻ってからずっとこの違和感の正体について考えていた。しかし現実的な答えは出なかった。
“できれば…もう少し調べられるといいんだけど…”
そう思っていた目の前で女子のヒステリーが彼女を襲っている。
“チャンスだ、仮説を試してみよう”
そこからは早かった。
ヒステリック女子を健太郎が追い返し、4人でカフェに行く流れになるも、闇子ちゃんの拒否で中止に、代わりに連絡先を交換することができた。
“もし…いやおそらくこの仮説しかない…”
交換した喪黒闇子の連絡先にメールをする。
『なぁ青路、お前は今何を企んでいる?』
これ以上このクラスを乱す真似はさせない