一般人の俺が、奇跡的に能力者集団に潜入できた。その感動を噛み締めていると、あの二人が俺を呼びつけてきた。そちらへ寄ると、部屋を出るようにとのこと。
それに従い彼女らについて外に出ると、目つきの悪い方が深刻そうに尋ねてきた。
「……見沼さん。降霊術を行った、と言いましたよね。あれ、本当のことなんですか?」
「……と、言いますと?」
思わず冷や汗が流れる。
「私と、こっちの宮嵜さん。所謂『霊感』みたいな能力を持ってるんですけどね」
何か察せた。
「私達の眼に、霊の類は映りませんでした。トモちゃんの反応も何か不自然だったし……何をしたんですか?」
……そうか、何も来ていなかったのか。つまり、『こっくりさんは成功した』わけか。
こみ上げる笑いを堪えきれず、肩が震える。
「……いや、そうか。何も来てなかったか。来てほしいなとは思ってたんだけどなぁ……」
「……? 何を言って……」
「こっくりさんの仕組みが科学的に説明できる、って話、知ってるか?」
2人組は首を横に振った。それなら説明してやるとしよう。
「まあ、簡単に言うとだな。参加者が本当にこっくりさんが来たと信じていれば、無意識の影響と肉体の反応とで勝手に硬貨が動くって話があるんだよ。つまるところ、信仰心は大事ってことだ」
「……私たちは何も来ていないことを知っていましたが」
「多数決じゃね? 2対5じゃ動く方に偏るんだろ」
目つきの悪い方は納得いかないようだったけど、それっきり質問してくることは無かった。
「……あ、そうだ」
目つきの悪い方じゃない方、たしかミヤザキだっけ。そいつが代わりに質問してきた。
「降霊術が失敗してたなら、本当の能力は何なんです?」
「え、そんなん持ってないけど」
「えっ」
「俺はただのオカルトマニアだよ。超能力集団なんて素敵なところに潜入したくて無茶したが……これは内緒な。君ら以外だとトム……じゃなかった、岩室弥彦しか知らないんで。俺はこっくりさんの達人ってテイでよろしく」
2人に頭を下げ、帰り支度をすることにした。