こつ、と黒い影が建物の屋上に舞い降りる。
よく見るとそれは人の形をしているが、蝙蝠のような濡羽色の翼を生やしている。
ゴシックファッションに身を包んだ少年とも少女とも言えない”それ“は、人気のない屋上の柵の上に立っていた。
「あら」
ふと声が聞こえて、黒い人影はくる、と振り向く。
そこには薔薇の髪飾りを付けた少女が立っていた。
「悪魔かしら」
それとも別の怪物?と少女は笑いかける。
「…何の用だ」
黒い人物は冷たく答えた。
少女はふふふと笑う。
「別に何もないわ」
ただ話しかけてみただけよ、と少女は言った。
「…」
黒い人物は黙って少女を見つめる。
「貴方こそ、何の用かしら」
今度は少女が尋ねる。