日の出に近いがまだ西は暗い午前6時頃、トラス橋を渡る音で目が覚める
川面の向こうには朝靄の中アパートや教会らしい建築物群が見える
「ここは?橋を渡っているが、ボルガやオビはまだ先だよなぁ…それに、川の向こうに中心市街地が見えるとなると、これはクラスノヤルスクのエニセイ川か?」
確証は持たなかったが、到着駅の駅名標にはКрасноярск( クラスノヤルスク)と書いてあった
つまり、さっきの川はエニセイ川だったのだ
クラスノヤルスクを出ると同時に彼女が目覚める
そして、開口一番「どうして私と距離置こうとするの?私ってそんなに魅力ないの?」といきなり尋ねてくる
「正直言って、君は俺にはもったいないくらい魅力的だからなぁ…君の彼氏が本当に俺でいいのか分からなくなってしまってね。俺がそばにいない方が君が幸せになれるんじゃないかとか考えちゃうんだよ。自分と彼女の関係のことになると後ろ向きになっちまうダメ男が彼氏でごめん。もし、こんな俺でも受け入れてくれるなら嬉しいな」そう言って頭を下げる
「バカなこと言わないで!私が生涯バッテリーを組みたいと思っている相手は貴方しかいないの!だから、こっちは貴方が重くてど天然で抜けている所がある私なんかと一生一緒に居たいと思ってくれるまで20年でも30年でも待つつもりなの!」と俺が彼女に初めて惚れた時のセリフで返された
「そうか。実は、俺も同じ気持ちだったんだ。こんな時にムードもへったくれもないけど、言わせてくれ。俺と結婚してくれないか?ゴーアラウンドならいくらでもするがダイバートはしない」と当時の言い回しで伝えて指輪を渡す
「もう、離さないよ」「俺もな」
カレカノから婚約者同士になったカップルを乗せ、列車は西へ行く