「企む?どうして?それに私は、青路じゃないよ?」
「お互い、隠し事はなしにしないか?」
“隠し事”
「隠すも何も、私は私だよ?誤送信じゃない?」
「間違ってないよ、喪黒闇子の姿をした桐谷青路に送ってるんだから」
“姿”
「どういうこと?」
そう送りかけたその指は送信ボタンの下、削除ボタンを連打した。
なんて返すのが正解?
まずどこからバレた?
闇子自身か?
いや、この事実を晒すメリットはないはず…
思考はどんどん自分を孤独に追い込んだ。逃げ込むようにスマホを握ったまま布団に潜り込む。
おそらく闇子の方の癖だろう。
サテンの布団が全身を包み込んだ。
違和感が、皮肉にも孤独を埋めていく。
“いっそこのまま…”
思考の到達を妨げるように現実のバイブが布団全体に響く。
「もし、青路が望むなら俺はお前の力になる」
これは罠なのか、それとも確信を持った上での言葉なのか、はっきりとは分からない。それでも今、ここで彼を頼るべきか…
出した答えは否だった。
「嬉しいよ、ほんとに私が桐谷君だったらどんなに良かったか…」
既読はすぐについた。
しかし先程までより返信に時間がかかっている。
仮説が間違っていることに当惑しているのだろう。突拍子もなければ証拠は何もない。ここまで本人にとぼけられたら当然だ。
「わかった。困ったらいつでも言ってくれ、俺はお前を信じてる。」
寒いくらいわざとらしい言葉だ。
橘らしいと言えばらしいのだが、今はそれだけじゃなく感じる。
このまま…橘に…守ってもら…
そのことばが浮かんだ瞬間、かぶりを振った。
まただ…闇子の体の部分が…俺の感情や理性を越えてくる瞬間。やはりこの体に心を許してはならない。
俺はやっぱり桐谷青路として、喪黒闇子を演じきるんだ。そしてやつの復讐を止める。
「ありがとう。なら頼めるかな?俺の復讐代行を」
to be continued…